彼女の目には、空が映らない。
せいはくじ。


7限目の終わりを告げるチャイムが鳴り響き、教室のあちこちから聞こえてくるカチャカチャというBGMで、俺ははっと我に返った。


俺の通う進学校は県でも上位に入るほどの進学校で、高校生活2度目の3学期に入って1週間が経った今、正月気分が抜けていない人なんてこのクラスには一人もいない。

もちろん俺だってそう。


「はい、じゃあ委員長」
「起立、礼」
『さよならー』



なのにあの日、始業式の日から、授業にも勉強にもほとんど身が入らない。

こんな風に、いつの間にか7限目が終わって、いつの間にか終礼が終わって、いつの間にか教室の過疎化が進んでいる。



「おいナツ。ちょっと気になってたんだけどさ、」



人がまばらになった教室で俺のもとにやってきてなぜか少し小声で訊いてくるのは、1年の時に同じクラスになって知り合った大野一夜(おおのいちや)。



「お前、ちゃんと授業きいてるよな?」
「…えっ」
「もしかしてまだ正月気分とか…?」
「いや、それはない。」


まるで同意を得るような訊き方をしてきた一夜に図星だったが、一夜の次の言葉には即座に否定の意を表すことができた。

そう、それは絶対にない。
それなりに結構ハイレベルな進学校の、しかも因みにいうと一応特進クラスにいる俺は、流石に正月休みなどという余韻に浸るわけもなくもちろんそんな余裕があるだなんて思いもしない。


「だ、よな。ナツに限ってそれはないよな…」












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