不甲斐ない恋
「だからさ、もう俺から離れないで?あき」

心底愛おしそうな顔で俺の顔を掴んで見つめる。
こんな、こんな顔で見られたら、俺。

でもおかしい。
なんでけーすけくん泣いてるんだろう。

「…け、けーすけくん、なんで泣いて」


「あき」


けーすけくんは強い力で俺を抱きしめる。
まるでこれが永遠の別れだというように。


「結婚しよう、もう俺から離れないで」


違うよ。違う。
俺がけーすけくんと結婚出来ないのは、俺がけーすけくんに幸せになって欲しいからっていうそんな理由じゃなくて、もっと、大事な、根本的ななにかが理由で…

出来ることなら、今ここでイエスと言ってしまいたかった。


けど言えなかった。
言いたいけど、言えなかった。

何かが引っかかる。何かを忘れてる。
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