お前の唇、奪っていい?


すみません、と頭を下げる祐誠に、店員さんは不満そうな顔を見せた




「残念だなぁ...でも分かりました、祐誠くんがそう言うなら。
だけどあたしはあなたの事が本当に好きなんですよ、だから諦めません」


「は、はぁ...そうですか...」




ええっと、なにこれ...

私ここにいていいの?




数秒間沈黙が続いた後、祐誠がじゃあ、と軽く会釈をして、店から出ていった




私もその後に続こうとした時、ふと店員さんに肩を叩かれた




「あの、本当に幼馴染ってだけですよね、彼女じゃないですよね?」


「は、はい、幼馴染です...」


「良かったぁ...あたし、もちろん祐誠くんのファンなんですけど、同じモデルとしてもすごく尊敬してるんです。
男の人として、ちゃんと好きです。
だから協力してくれませんか?」


「...え.....」




協力って、祐誠と付き合えるために私が協力するってこと?




ええと...と言葉を濁していると、店員さんが握手を求めてきた




「あたし奥村菜々子(おくむら ななこ)っていいます、祐誠くんと同じ高校2年生です!あなたは?」


「高校2年の安藤舞です...」


「同い年だったんだ!よろしくね、舞ちゃん」


「う、うん...」




この出会いが、私にとっての悲劇の始まりだとは、もちろん私は知らなかった



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