お前の唇、奪っていい?

「...祐誠?」


「あ、起きたか。桃寧が布団敷いたらしいから
今日は泊まってけ」


「あー私寝ちゃってたんだ...自分の家じゃないのに申し訳ないなぁ...ありがとー...」


「ん」




...っぶな!危うくキスしたのバレるところだった!!




もしバレたらただ事じゃねぇーよ...




未だ激しく動いている心臓を落ち着かせながら舞を見ると、
舞はまだ寝ぼけているのかぼんやりとしていた




「寝ぼけてないでさっさと行け」


「んー」


「ほら、立てって」




無理やり腕を掴んで立ち上がらせると、なんと舞はおぼつかない足で方向転換し、
勢いよく俺に抱きついてきた




「おんぶして連れて行って、"お父さん"」


「っ...」




こいつ、俺をおじさんと間違えてる?




もちろんいつもの舞なら俺にこんなことしない




「お父さん?」


「.....」




俺は、何も言えなかった

こいつの家の事情は、舞の知り合いの中で俺が一番知っていると思う




だからこそ、この時俺は何も言えなかった


心が痛んだ




こいつの父親は、7年前ーー。俺達が9歳の時に、亡くなった




しかも、俺と舞の目の前で





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