お前の唇、奪っていい?
高校3年生
ーー高校3年生、夏
「舞はどこに行きたい?」
「そうだなぁ...あ、海は?」
「いいね、海!」
今私と啓くんは、学校近くのカフェにいる
明日から夏休みだから、遊びに行く場所を決めてるの
私も啓くんもアルバイトしてて、金銭的には余裕があるから、遠出したいねって話し合ってるんだ
私達が付き合ったのは、2年生の冬休み
クリスマスイブに啓くんが改めて告白してくれて、付き合うことになった
その時はまだ啓くんの事を男の人として見れなかったけど、今はちゃんと男の人として好きなの
だから今、私はすごく幸せ
幸せ、なんだけど.....
「ねぇ昨日のドラマ見た!?祐誠くんめちゃめちゃかっこよかったよね!まじ同じ学校ってうちらすごくない?」
「奥村さんとも上手くいってるみたいだしねぇ。いいなぁ!でも奥村さん美人だから、うちらは何も言えないよねー」
ずきり、と心が傷んだ
祐誠ーーもう、一年以上話していない
家が隣で会おうとすれば会えるのに、私達の間には大きな大きな壁がある
それに、今年もお墓参りに来てくれなかった
「はぁ...」
「...ねぇ舞」
「あ、ごめん、なに?」
「祐誠に、会いたい?」
「...っえ.....あ、会いたいわけないでしょ?あんなに酷いこと言われたんだもん。会わなくて清々してる」
もちろん、そんなのは嘘偽り
本当は、話したいし、会いたいし、一緒に笑いたい
だけど、そんなの無理
祐誠は、私と話したくないし、会いたくないもん...
私はオレンジジュースをストローで飲みながら、そんな思いを必死に胸の奥に閉じ込めた