お前の唇、奪っていい?
一緒にいるのが当たり前で、離れることになるだなんて思ってもいなかった
大切なものは失って初めて気づくってよく聞くけど、それは本当だった
パシられたし、嫌味だってたくさん言われた
だけどどんな事があっても、祐誠を応援してたし、ファンを辞めたりなんかしなかった
それは絶対、私にとってかけがえのない人だったからで...
「...お兄ちゃん!」
「っ!」
桃寧ちゃんの声に反応し、バッと振り返ると、そこには久しぶりに見る祐誠の姿
テレビとか雑誌とかで見たり、廊下ですれ違ったりはしたけど、
改めて顔を合わせるのはあの日以来かも
「早かったね、あ、舞ちゃんもね、手伝ってくれるって!」
「え...いや私はそんな事言って...」
「.....手伝いとかいらない。ふたりだけで充分だろ。桃寧、関係の無い奴を巻き込むなよ、迷惑だろ」
「関係のない奴って、舞ちゃんじゃん!お兄ちゃん、何怒ってるの?」
「怒ってないけど。ただ俺が頼んだのは桃寧だけだ」
その時の記憶は、不鮮明だ
気づいた時には、私は祐誠の目の前に立ち、大声で怒鳴っていた
「本当になんなの!?私、何かした?あの時は私のせいでごめん...って落ち込んじゃったけどさ。でも祐誠のその態度、酷いと思うけど!?」