お前の唇、奪っていい?
「大体、わ、私達幼馴染じゃん!
奥村さんと付き合ってたなら、言ってくれても良かったんじゃない?
あの撮影だって、私じゃなくて奥村さんに頼めば良かったじゃん」
こんなに大声で叫んだのは、久しぶりだった
桃寧ちゃんは急に私が大声で叫ぶものだから、びっくりしていたし
祐誠も、目を見開いて驚いていた
祐誠が口を開いたのは、それから数十秒後
はぁ、というため息とともに、冷たい視線が私に向けられた
「菜々子と付き合ってることをお前に言うわけないだろ。
お前は一般人で、俺たちとは住む世界が違うんだよ。お前がバラすかもしれねぇのに、言えるわけないだろ」
「.....お兄ちゃん、何もそこまで...!」
「先に俺の教室行ってろ」
「.....」
桃寧ちゃんは祐誠の冷たい視線に怯みながら、早歩きでその場から去っていった
正直、私も桃寧ちゃんにはこの場にいて欲しくなかったし、良かったんだけど...
「祐誠にとって私は、その程度だったんだね...」
「当たり前だろ。お前はただの幼馴染、それだけだよ。他に俺たちにどんな関係がある?」
「住む世界が違うとか、祐誠は言わないと思ってた。なんか変わったよ、祐誠」
「それはお前の勘違いだ。俺は元々こうだよ。ってかもういいか?お前と違って忙しいんだよ」
「お前お前って!!舞って呼んでよ...!あの時みたいに、舞って...呼んでよ...」
「っっ...」
頬に、熱い何かが伝う
必死に拭うけど、それはどんどん目から溢れてくる
「大切に思ってたのは、私だけだったんだね...」