お前の唇、奪っていい?
祐誠が私に、キス...?
そんなの、あるわけないじゃん...
「見間違いだよ、有り得ないもん」
「絶対してた!お兄ちゃん、絶対舞ちゃんの事好きだよ!きっと何か隠してるんだよ」
隠してる、って言ったって...
でももし本当に何か隠してるなら、何を...?
「あ、桃寧ちゃんいた!」
「.....菜々子さん...」
「...あれっ、もしかして舞ちゃん?久しぶり!なんか前より舞ちゃん、可愛くなったね!」
「奥村さん...」
声をかけてきた奥村さんの隣には、祐誠がいた
仲良く寄り添いながら、ふたりして私たちの事を眺めている
あぁもう、この光景はいつ見ても慣れない
ちく、って胸が痛くなる
「ごめん私、行くね」
「あ、舞ちゃん待って!」
「なに、奥村さん...」
「夏休み、あたしと祐誠と桃寧ちゃんで、海に行くの。一緒に行かない??」
...なに、それ
奥村さんは祐誠と仲良くしてるとこ、見せつけたいだけのくせに...
「ううん、大丈夫。
...受験勉強あるし、海とか、行ってる暇ないだろうから...
誘ってくれてありがとう、ごめん」
そう言って、私は自分の教室に走った
今なんか、すごい自分が惨めだ
私が去ったそのすぐあと、祐誠達はーー
「あーあ、逃げちゃったぁ。追いかけなくていいの?ゆ、う、せ、い」
「...腕離せ。てか海とか初耳なんだけど」
「初めて言ったもん。あ、そうそう。桃寧ちゃん」
「...はい」
「"約束"、破らないでね?」