『ドルチェ♬』
バンド部と君の音色。
『ベース、音が下がってるぞ詩乃(シノ)』

『うっ、うんっ』

夏に入る前の梅雨のジメジメした空気が張り詰めた空き教室の中でこもる。

額から頬へと滴る汗なども拭く暇もなく私たちバンド部の来月に行われるステージ発表の練習は繰り返されていた…。

私の少し手前でギターを弾きながら演奏しているバンド部の部長、

天野 奏汰(アマノ カナタ)

の姿がやけに様になっていてかっこいい。

黒いふわふわの髪に、黒縁のメガネ…

制服の白色のTシャツの袖を肘少し手前まで腕まくりしてギターを構えている姿に不覚にもトキメキいてしまう。

そんな奏汰からの指摘に一生懸命自分の担当であるベースの音を合わせる。

私ももちろんだけどその倍に汗が頬から床へと滴るほどに流している奏汰の為にも練習であまり迷惑にならないように頑張っているのに、

どうしても気持ちが音に影響してしまうのが事実で…
だからこそ、私は彼への『好き』という気持ちも押隠すことに決めたのだった…。

それに、彼だけじゃなくてドラム担当の

西川 裕翔(ニシカワ ユウト)

やキーボード担当の

空見 里華(ソラミ リカ)ちゃん

と私と奏汰で結成されている『Dolce』というバンド部の関係も私の恋愛感情のせいで壊したくないことも理由の1つだったので私はなおさら彼への気持ちを心の奥の奥まで押し込めたのだった…。
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