『ドルチェ♬』
『…はいはい、そこまで。
もう休憩の時間だから力抜け里華。』

その声にようやく気まずくなりかけていた空気が解かれ里華ちゃんの厳しげな視線も優しくほほ笑む奏汰の方へと流れて言った。

『ほら、タオル…風邪ひくよ?
詩乃もベース置いて汗もちゃんと拭かないと…』

臆病者で足を引っ張ってしまっている私にも優しくしてくれる奏汰は本当に部長と言うのがふさわしい程に場の空気を和ませるのがうまかった。

厳しくてしっかり者の副部長、里華ちゃんと組むと本当に最高コンビだと思う。

実際、何度も廃部や解散になりかけたバンド部を中学2年生の今の今までずっと2人協力してこのバンド部を継続させてくれたと言っても過言じゃなかった。

さすがの里華ちゃんも部長の優しい言葉に素直に行動するほど彼の信頼度は厚かった。

私も、ベースを置きまだ首元でベタつく汗を吹き水分補給をする。

今まで汗として流してばっかで足りなくなっていた体内の水分が補給されたことで少し気分が楽になるのと同時にひんやりと冷たい水分が体の中に巡り涼しさを得られた。

そこでようやく『ふぅ…』と息をついた私は隣に誰かが立ったことに気づき顔を上げる。

『詩乃…、最近同じ所でよく音下がるけどチューニングちゃんとなってるか?』

隣に立ったのは奏汰で私をのぞき込むようにして問いかけてきた。
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