『ドルチェ♬』
『……!!っそうだ!ちょっと来い詩乃!』

私の様子に言葉を失くした裕翔は諦めたかのように下を向く。

けど次の瞬間、何かいいことを思いついたかのように顔を明るくすると私の腕を引いて写真部の部室を後にした。

裕翔のいきなりの行動に私はついていけずただ引きづられるように裕翔のあとを走ることしかできずにいた。

『なっ何?!裕翔…』

当然、驚きを隠せない私は依然走り続ける裕翔の背中へと言葉を投げる。

写真部の部室は旧校舎に入って結構奥にあるはずなのに目の前で私の腕を引いて走る裕翔はその旧校舎のもっと奥へと走って行く…。

奥に行けば行くほど消えていく音たちは私たちの吐息と床を蹴る足音を強調させていく。

旧校舎にこんなにも踏み込んだのは初めてで、西陽は廊下を漂う埃たちもまだキラキラと照らしていた…。

今度は、裕翔だけではなく私も夕日に照らされてオレンジ色に染まっている。

走っている私たち同様、私たちから伸びた影も私たちより先を走る。

不思議とその光景を冷静に綺麗だなぁ…

なんて感じていた。
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