私の愛しいポリアンナ






ちょうど10分後にマオちゃんのお兄さんはバーにやって来た。
軽い挨拶もそこそこに、マオちゃん兄妹は席を移す。

さて、じゃあ私はどうするか。
マオちゃんにはいろんな人と話せって言われたけど。
まぁ、物は試し、どうせ今晩だけの付き合いなのであまり気負う必要もないだろう。

まずは隣に座っている人に話しかけよう。
そう思い、私は隣に目を移した。
途端、体が動かなくなる。

そこには、大変見目麗しい青年がいた。
焦げ茶色の髪はふわふわとまとめられており、顔立ちは少し幼い感じ。
俳優さんか役者さんだろうか?
歌舞伎役者も美形が多かったような。
なんとなく、そっち方面の世界の人のような気がする。

とにかく、隣の席の彼は幼い顔立ちながらも目を惹きつけるような美しさだった。

あかん。
思わず関西弁が出てしまうほどに動揺した。

まさかここでこんな絵画の中にいるような人に会えるなんて。
そこそこの年齢のおじさまと話すつもりでいたのに。

この人だったら「夢でお会いして以来ですね」のセリフも許されるだろう。
みのりは好きなお笑い芸人のことを思い、つい声をかけていた。


「あの、すみません」

「はい?」

「『夢でお会いして以来ですね?』って言ってもらっていいですか?」

「あ?」


顔を向けた彼の顔がいびつに歪んだ。
その表情もなんだか「可愛らしい」という言葉が似合うもので、やっぱり元がいいとどんな表情も印象がいいので得だな。

男性にしては大きな目でじっとみのりの方を見つめてくる。
童顔だからか若いと思っていたが、体つきや服装からしてそこまで若くないかもしれない。





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