私の愛しいポリアンナ
「なんで男性って、一度やったらその女性を自分のもののように思うんでしょうかね。お互いやりたいだけで会ったのに」
「は?」
「不思議ですよね。正直私、そこまで身なりに気を遣ってないし美人でもないのに、それでも執着してくるんですから。大昔からの狩猟本能的なものが生きてるんでしょうか。自分の獲物は自分のもの、みたいな」
ヒグマみたい、とみのりは感想を述べる。
ヒグマって自分が殺した獲物を取られると、匂いをたどって追ってくるらしいですよ。
漫画で読みました、なんて言っているが、秋の頭はそれをすり抜けていく。
今、この女は何と言った?
やりたいだけ?
秋の頭には「ヤリモク」の言葉が浮かぶ。
いつの間にか、知り合いの女性が奔放に(自暴自棄に)なっていた。
その責任の一端を秋がになっているのかもしれない、とも思った。
それでも何とか平静を装って、声を出す。
「自分の体は大切にしろ」
出てきた声は普段よりワントーン低い声だった。
さながら娘を心配する父親。
俺は芹沢みのりのお父さんか。
秋は自分でそう思いながらも、みのりの目を見つめた。
「大切にしてますよ。ただちょっと、いろんな人と経験があった方がいいかな、と思ったので」
「それは大切にしてないだろ。あと、女は経験数じゃなくてテクニックだ」
「セクハラです」
「俺に出会い頭にゴムが取れなくなったことを報告してきたのも十分セクハラだったぞ」
むすっとしたみのり。
しかしすぐに何か思いついたのか、「あっ」という顔をした。