私の愛しいポリアンナ
もう二度と会うことはないと思っていた。
しかし、秋はそれから何度も芹沢みのりと顔をあわせるようになった。まるで神様の悪戯のように。
そう、例えば帰りの電車の向かいのホームでだらしない男と話し込むみのりを。
夕方の駅のベンチで爆睡する男をぼんやりと見つめるみのりを。
明らかに何らかの病気にかかっている男(皮膚のただれ方が異常だった)の手を引き、タクシーに乗り込むみのりを。
秋としてはそのどれもを見逃しても良かったのだ。
いや、見なかったふりをしても良かった。
しかしどうしてもそれは出来なかった。
なぜなら、みのりと一緒にいた男たちはどいつもこいつもタツヤに似ていたからだ。
別にタツヤに似ていることが悪いことじゃない。
みのりの趣味が一貫しているというだけの話だろう。
それだけで話は終わらないのだ。
にへらとした緩みきった表情、だらしない格好と見た目だけが似ているならまだいい。
問題なのは、全員が全員、訳ありの風貌であるということだ。
「おい、今度はなんだ」
タクシーに男を入れるみのりに声をかけてしまったのも、ひとえに根が善人な秋の性質ゆえだろう。
これで偶然見つけたみのりに声をかけるのも3回目だ。
二度ある事は三度あるというが、こんなことは三度もあって欲しくはなかった。
当のみのりはというと、声をかけてきたのが秋だとわかると「ちょうど良かった」というように顔を輝かせた。
「彼、病気みたいなんです」
「だろうな」
男の後に続きタクシーに乗り込むみのり。
彼女は当たり前のように秋にも同乗するよう促す。
秋はもうどうにでもなれ、といった気持ちでみのりの横に体を滑り込ませた。
みのりの隣の男はただれた皮膚もあらわに、どこかぐったりしている。
彼女が連れている男なのに、軽薄でチャランポランな笑みを浮かべていないのは珍しい。
ただ単に具合が悪いだけかもしれないが。