私の愛しいポリアンナ
「なるほど。確かに、私、ダメな男が好きなわけじゃないですね。ダメな男の世話を焼くのが好きなんです!」
そうです、きっとそうなんです!長年の謎がようやく解けました!ありがとう設楽さん、となぜか感動してキラキラの目で秋の手をブンブン握る。
だからですよ、だから、私はタツヤとセックスしたいとも思わなかったし、結婚したいとも思わなかったんです。
そう、マシンガントークをかましてくる。
どう見てもまともなテンションではない。
興奮した女性のテンションの振れ幅はこんなにも大きかったのか。
秋は呆然とした思いで目の前のみのりを見ていた。
「私、タツヤが好きだったんじゃないんです。タツヤのことをずっと気にかける私自身が好きだったんですよ」
うん、きっと、そうなんです。
だからタツヤには笑っていて欲しかった。私が守ってあげて、幸せになっていく姿が見たかったんです。
そう、うわごとのように繰り返す。
不意に、みのりと秋の手が離れる。
急に手が寒くなった。
そして一転してだんまりになったみのり。
なんだ。
しゃべりまくったと思ったら急に黙りこくって。
秋は初めて、芹沢みのりが得体の知れないものに感じた。
「つまり、私の人生には、ダメな男が必要なんです」
いったい彼女の頭でどんな式が成り立ってその答えにたどり着いたのか。
全くわからない。
わからないが、今のみのりがまともな思考回路ではないのがわかる。
「ダメだ」
秋の口から、思わずそんな言葉が漏れていた。
「あんた、自分自身もだいぶダメな女だぜ」
ダメっていうか、バカな女だけど。
バカっていうか、趣味が悪い女で。
趣味が悪くて、見てられないような生き方しかしない女。
「だから、あんたみたいなダメな女が、ダメな男と一緒になるなんて、それこそどん底だ」
泥みたいな人生しか生きられない、きっと。
だから、ダメだ。