私の愛しいポリアンナ
つまり、プライベートルームだ。
ここにみのりがいる、と部下は言う。
恐る恐るといった風に扉を開けられる。
黒い扉の先。
秋のこだわりのセンベラのベッド。その上で、化粧も落とさずに寝こけている女がいた。
芹沢みのり。死すべし。
設楽秋は激怒した。
寝室の前で仁王立ちし、般若の形相になった秋に部下は「すみません、眠いってぐずっていたらそのままこの部屋に来て寝てしまって・・・」と経緯を説明してくれた。
部下に罪はない。
彼は秋の介抱をしてくれたし、みのりの動向も気にかけてくれたのだろう。
いつまでも彼の手を煩わせるのも悪いので、今日はここで帰ってもらった。
まともな持てなしもできず、彼には悪いことをした。後日埋め合わせをしよう。
さて、部下を見送った秋。
酔って頭も重いことだし、今日は速攻ベッドで眠りたい。
しかし今、自分のベッドはみのりに占領されている。
クークー寝息をかきながら眠る女を見る。
こいつ、酔ったら眠くなるタイプか。
頭痛と気持ち悪さで吐く秋からしてみたら羨ましいタイプだ。
今でも秋はなんとも言えない嘔吐感と頭痛に苦しんでいるというのに。
怒りを持続する力もない。
秋はなんだかどうでもよくなってきていた。
今ここにみのりが寝ていることよりも、明日は得意先との打ち合わせがあるのに二日酔いになる可能性があることの方が問題な気がする。
いや、明日のことは明日考えよう。
なんとかなるだろう、きっと。寝よう。
みのりの寝息につられたのか、秋にも猛烈な眠気が襲ってきた。
秋のベッドを占領しているみのりを押しのけ、半分ほどスペースを空ける。
そのまま秋はゴロンと横になった。
頭の痛みが強くなった。しかし、目を開けていられないほどの眠気。
今が冬じゃなくてよかった。
季節は秋だから、まだ、ギリギリ、風邪はひかないだろう。
そう思いながら、秋は眠りに落ちていた。