私の愛しいポリアンナ
「なぁ、本気でここに居座るつもりか?」
夕方になり、そろそろ正気に戻り帰り支度を始めるかと思っていたが、芹沢みのりは一向に帰ろうとしない。
いくらポンコツでも、付き合ってもいない男の家に住むのが常識外れだということはわかっているだろう。
分かっているはずなのに、みのりは帰ろうとしない。
一応、常識はあるはずなのに。
これは何かあるな、と秋はピンと来た。
「帰れない理由でもあるのか?」
直球でずばり聞いたら、みのりは分かりやすく肩をビクリとさせた。
ははぁ、やはり家に帰れない理由があるのだな、と秋は合点がいく。
どうせゴキブリが出たとか蜂が出たとかそんなところだろう。
みのりは恐る恐る振り返り、秋の機嫌を伺いながらこう言った。
「怒らないでくださいね」
「なんだ」
怒られるようなことをしたのかこの女は。
秋は眉をひそめた。
残念なことに、その予想は当たる。
「家に、この前助けた男の人がいて……」
「どの男だ。酔っ払って吐いてた奴か?性病で病院に連れて行った奴か?」
「いえ、設楽さんはいなかったときに助けた人です。裸足だったので靴を買ってあげたら懐かれてしまって」
「おい」
「ご飯を分けたら、勝手に合鍵を作られてしまい、今わたしの家にはその人がいるんですよ」
どうしたらいいでしょう、とみのりは言う。
どうするもこうするもあるか。