私の愛しいポリアンナ
「物好きですね」
それだけ言う。
彼女の体から力が抜けた。
秋はその体に覆い被さり、ゆっくり首元に口をつけてみた。
暖かい。秋と違うボディソープの匂い。
女物ってなんでこんなに甘い匂いにするのだろう。
秋はそんなことを考えながら、みのりの腹に手をまわす。
スゥスゥと穏やかに、呼吸に合わせて上下している。
暖かいな。
ちょうどいい温度の湯たんぽみたいだ。
首元に唇を這わせ、そうして、次は。
「あの、やっぱりやめてもらってもいいですか」
不意に、みのりの声が落とされた。
そうして状況がいまいち飲み込めていない秋を置き去りに、ガバリと起き上がる。
「私、設楽さんとどうこうなるのは無理そうです」
すみません。なんでかは自分でも説明できないです。そう、みのりは言った。
そうしてそのまま横になり、何事もなかったかのようにスヤスヤ寝始めたのだ。
こいつの胆力どうなってんだ。
気の抜けた秋が最初に思ったのはそれだった。
みのりとしては、どうでもいいその辺で知り合った男とは寝れるけど、知り合いである秋と寝るのは無理、とのことなのだろう。
ボスン、と秋も仰向けに寝転がる。
隣から聞こえるみのりの寝息。
また、ムカムカとした胸焼けが襲ってきた。
「設楽さんとどうこうなるのは無理そうです」みのりの言葉を、もう一度自分で言ってみる。
声は音にはならず、カサカサとしたかすれた音が出ただけ。
俺は。
秋は天井のぽこぽこした模様を見つめる。
俺は、あんたとどうにかなりたいんだけど。
そう言えばよかった。さっき。間髪入れずに。
言ったら、みのりはどんな顔をしたのだろう。
秋はごろりと横を向く。
みのりと反対方向。
ようやく、自分の変化を受け入れられた。
胸焼けにも、別の名称がつけられそうだ。