私の愛しいポリアンナ
かわいくしてても手にはピストル
朝起きたらみのりがトーストを焼いていた。
「ジャム何にします?」なんて、昨晩のことは何でもないかのような振る舞いをする。
それにムカついて、秋はじっと黙り込んでしまった。
実際、みのりにとっては何でもないような出来事だったのだろうからさらにムカつく。
芹沢みのりという女は、どこかずれているのだ。
「あのさ」
どかりと椅子に腰を落とし、秋は口を開く。
トーストに向けていたみのりの視線が上がる。
「昨日気づいた。俺、あんたが好きだ」
出てきた言葉はぶっきらぼうで、何とも可愛くないものだった。
全然スマートじゃない。
今までの恋愛手腕はどうしたのだ、と秋は自身に問いかけたくなった。
みのりはしばし口を結び、目線を下げる。
「なるほど」
なるほど、ともう一度ちからの抜けた情けない声を出した。
本当に分かってるのか、と問いかけたくなる反応だ。
「例外ですね」
「何が」
「年収1000万の男があんたを視界に入れるわけないだろって、前言ってたじゃないですか」
「あぁ、確かに」
俺は例外だったな。と秋はつぶやく。
自分だって驚いているのだ。
みのりはさらに驚いているだろう。そう思ったが、反してみのりの反応は鈍かった。