私の愛しいポリアンナ
「これからも連絡するからな。あんたがまたダメ男にひっかかるかもしれないし」
「監視は続くんですね」
みのりの苦笑いが溢れる。
不意に下を向いたみのり。
さらにこぼれているトーストのカスを見つめ、ぼんやりとした目でこう言った。
「設楽さんって、私のどこが好きなんですか?」
「どこ・・・?」
どこが好き。
そう聞かれても、秋は答えられなかった。
再三考えたが、みのりの外見は秋の好みじゃない。
性格だって秀でて良いというわけでもないだろう。付き合ってもいない男の家にこれだけの期間いられるのだから、図々しさと胆力はあるのだろうが。
みのりはぼんやりとした目のまま、何も答えられない秋を見つめた。
「何だか、設楽さんが私を好きだっていうのが、物珍しさでそう言っているんじゃないかって気がするんです。なかなか捕まえられない珍獣みたいな。難攻不落の城を崩す楽しさというか」
うまい例えが思いつきませんね、とみのりはこぼす。
秋は珍獣、城、とみのりの言葉を反芻する。
好きに理由は必要なのか?なんていうありきたりの言葉まで頭に浮かんだ。しかし秋自身、恋にはそれなりの条件と理由があると思っているので口には出さなかった。
寒いところのほうが、異性が魅力的に見える。
イルミネーションを背景にしても然り。
吊り橋効果とか、遺伝子の遠さとか。
どうして自分は芹沢みのりのことが好きなのだろう。
改めて、秋はみのりを見つめながらそう思った。