私の愛しいポリアンナ
「どうでした?」
「気持ち悪かったな」
ぐったりした気持ちだったからか、つい映画後のみのりに質問に正直に答えてしまった。
思わず右下のみのりの顔をうかがう。
気を悪くしたかと思ったが、そうでもないらしい。
逆に、楽しそうに「ですよね」なんて言っている。
ネオンの光に照らされたその楽しそうな顔に、なぜか胸が弾んだ。
「チケットくれた知り合いが、あの映画大好きなんですよ」
「稀有な人材だな」
監督と友達になればいい、と投げやりにつぶやいた秋に、みのりはケラケラ笑った。
「実際、話が合うと思いますよ。お互い趣味が同じでしょうし」
「B級映画好き同士な」
「まぁ、それもありますけど、それよりもスカトロ趣味ですよ」
頼むから、女性が往来でそんな下品な言葉を使わないでくれ、と思った。
しかし通りすぎていく人は全く2人の会話を気にしていないし、何よりここは御街だ。
ピンサロの前を通り過ぎながら「まぁ、もういいや」とどうでもいい気持ちになる。
下品な街で下品な会話。ちょうどいいだろう。
「知り合いが熱弁してくれたんですよ。あの映画の好きなところ。彼曰く、白人女性がアジア人男性のものを食べるというシチュエーションが興奮するらしく。あれこそ究極の性癖が詰まった映画だとか」
「・・・不思議な世界だな」
「私にもわからなかったです。世界は広いなぁ、とは思いましたけど」
ふと、みのりの足取りがゆっくりになる。
すいと視線を上げて、2人の目線が合う。