私の愛しいポリアンナ
「いえ、違う気がします」
なんでだろう、とみのり自身も不思議そうに言った。
「前は、変わろうと思って何人かと関係を持ってたんです。マオちゃんを知ろうと思って」
「マオちゃん?」
「友人です。ほら、私たちが初めて会ったバーで、アドレス交換するように計らってくれた子ですよ」
おぼろげに記憶が蘇る。
そんな女性がいたような気がしなくもない。
秋はみのりのブラホックを外しながら続きを促す。
「マオちゃんは気分屋みたいに、一晩だけの関係を楽しんでいて、私にはそれが信じられなかったんです」
「まぁ、模範的な女性ではないな」
「気持ちいいからって言ってたんですが、私にはわからなくて」
「あんたって不感?」
「さぁ」
どうなんでしょう。
みのりはそう言いながら宙を見つめる。
その視線をこちらに向けたくて秋はみのりの額に唇を落とす。
しっとりと汗の匂いがした。
それから、みのりの柔らかい腕を掴む。
唇に口付け、下唇を食む。
もう会話は終わりにして、このまま進んでもいいだろうか。秋がそう考えていた時。
みのりの唇が動いた。
「男の人って」
不思議そうな、本当に分からないような顔をしてみのりが呟く。情事中とは思えぬほど、心ここに在らずといった様子。
ほやん、とした顔。
色気もクソもない。けれど秋は興奮しているのだから、惚れた弱みというやつだろう。
ぼやけた黒い瞳に、俺を見ろと言いたくなる。
「男の人って。してるとき、何考えてるんですか?」
ぼんやりとした口ぶりでみのりはそう言った。
秋はしばし瞠目した。
してるとき、セックスのとき、何考えてるって。
そんなの。
「あんたのこと」
それしかないじゃないか、と思いながら答えた。
この質問に対する正解が全く分からない。だから、秋は思ったことをそのまま言うしかなかった。