私の愛しいポリアンナ
「ねぇ、俺の目が見えなくなったのはクスリのせいだってみんな言うんだ。でも最近は俺が悪いことしたから、ジュンナちゃんが俺の目玉を持ってちゃったんだって言う人もいる」
「あんたの目玉は今もあるよ」
「あるの?」
「あぁ」
「本当に?」
「ある。ジュンナちゃんって誰だ」
「俺がお酒にクスリ混ぜて泥酔させた子。でもあれは、あの子の頭が悪かったからだよ。俺、あの子の眼の前でお酒にクスリ入れたもん」
あぁ、タツヤに強姦された中学生か、と秋は合点がいった。
タツヤはぼんやりとした目で、それでも不気味に笑っていた。
「俺が悪い奴だったから、目玉をくり抜いたって言ってるよ」
「誰が?」
「わかんない。でも、そう言ってる声が聞こえるんだもん」
あ、ほら、次は包丁持ったジュンナちゃんが俺を殺しに来るって言ってる。俺が悪いから仕方のないことだって、みんな言ってる。
タツヤは楽しそうに言う。
みんなって誰だよ、との疑問は口にはしなかった。
秋は居心地の悪さを感じながら、ベッドの横に置いてある椅子に腰掛けた。
幻聴。幻覚。認知障害。
薬のせいか病気のせいかわからないが、タツヤはおかしくなっている。
タツヤの話が終わるのを待って、秋は本題を切り出した。
「みのりに会いたくないか?」
スー、とタツヤの呼吸音。
表情が強張ったのがわかる。
ゆっくりと、彼が横に首をふる。NOということか。
「あんた、みのりのこと好きじゃないんだな」
分かっていることではあったが、もう一度秋は尋ねた。
タツヤはまた横に首をふる。
わかんない、と頼りない声が聞こえた。
「みのりちゃんが言ったんだ。他の人に。俺の家のことは、あんまり聞いちゃダメだよって」