私の愛しいポリアンナ
次に設楽秋と会ったのは、一週間後だった。
「ポリアンナ症候群って、行きすぎたポジティブ思考だって出てきたんだけど」
iPhoneをいじりながら秋がそう言う。
みのりはメニューを眺めながら頷いた。
秋のお気に入りだというイタリアンレストランに連れてこられたが、やはり彼のセンスはいい。
店内の雰囲気も、扱っているワインも良いものだ。
海鮮系が食べたいなぁと思いながらメニューに目を通す。
「調べたんですか?」
「まぁな。ポリアンナのアニメ知らなかったし」
ポリアンナ症候群。
それは、アニメでポリアンナがやっていた「いいこと探し」が名前の由来だ。
いいこと探し。
いいことばかり目に入れて、改善も反省もしない、そんな症状。
ポジティブなのはいいことだが、何事も行きすぎると毒なのだろう。
楽天主義の負の側面。
現実逃避や自己満足、そんな言葉が並んでいるのだろう、iPhoneの画面を秋は眺める。
「しっかし、ポリアンナもいい迷惑だよな。別にポリアンナ自身は良い方にポジティブなのにこんな病気の名前に使われて」
「そうですね。私そのアニメ見てないのでわからないですけど」
携帯いじってないでさっさとメニュー決めましょうよ、と言えば俺はもう決まってると返された。
そういえば入店した時点で店員が親しげだったような。
おそらく彼はここの常連なのだろう。
接待ででもよく使うのだろうか。