私の愛しいポリアンナ





タツヤ好みの女は恋や愛には無関心な設定。
その設定のままにここ十年ほど生きていたからか、タツヤについて誰かに話すことは経験がない。
つまり、みのりは自分の恋バナというものをしたことがないのだ。

でも、実際のところ一度くらいは自分が好きな人について誰かに語って聞かせたかった。
設楽秋はいい標的だ。
彼だってみのりの話に興味を持ってくれているようだし、みのりはずっとしたかった恋バナができる。

正直言って、今の状況はみのりにとって喜ばしいものだった。


「タツヤって、本当になんでも『よかったねぇ』とか『いいねぇ』で流すんですよ」


赤点取っても「頑張ったんだから十分だよ」。
ひっどいZ級映画を見ても「まぁ完成してるんだからいいじゃん」。
極め付けに、高校の時に付き合っていた彼女を妊娠させてもケロッとしていた。
「お互い、したかったんだからいいじゃん」と。
いつものヘラッとした顔でそうのたまったのだ。


「・・・クズ男かよ」

「まぁ、世間一般ではそう言われる部類ですね」

「で、あんたはそんなクズ男が好きなわけね。男の趣味悪すぎだろ」


知ってますよ、と返そうとしたところで頼んでいたワインが運ばれてきた。
空きっ腹にアルコールはあまり入れたくなかったが、秋がワインを注いできた。
一応の礼儀として口はつけておこう。

チーズが欲しいなぁ。






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