私の愛しいポリアンナ
「てかタツヤってポリアンナ症候群って言うより、ただのクズだろ」
「クズクズ言わないでください。それに、そんな単純じゃないんです」
「はぁ?」
「逃げたかったんですよ、タツヤは」
「何から」
「いろいろ」
意味がわからん、という顔をしている秋。
確かにみのりの言ったことでは何一つわからないだろう。
でも、私だってどこから説明すればいいのかわからないのだ。
うーん、とワインを飲みながら考える。
鼻先をかすめる匂いだけでも、上等なワインとわかる。
「まず、私とタツヤは小学校三年生の時に会ってそこから友達になったんです」
「そんな初めから話すのかよ」
げんなりした口調の彼にみのりは鋭い視線を飛ばす。
いいから聞け、と目で訴える。
「冬の時期は、放課後に校庭で雪合戦をするのがクラスのブームだったんです」
「あんた東北の出身?」
「はい、宮城から」
「ふぅん」
「で、その雪合戦に軍手でやってきたタツヤに、私が予備で持っていた手袋を貸してあげたのが始まりです」
知ってます?撥水性の手袋。
スキーとかするときに使うんですけど、あれは雪合戦では最強の武器なんですよ。
それを貸してあげたんです。
そう言うと、秋に「知ってる。俺もスケボするし」と面倒くさそうにあしらわれた。