私の愛しいポリアンナ





「その一件から、タツヤが私に恩を感じたのかよく話しかけてくるようになって」


話しながら、小学生の頃を思い出す。
あの頃のタツヤは可愛かった。
コロコロ、ふくふくしてて。
顔はいつもヘラヘラしてたけど。

みのりが何をしても「すごいねぇ、みのりちゃんすごいねぇ」とオウムのように繰り返してた。


「タツヤって頭弱いの?」

「弱いですね」


なのにあんたタツヤのこと好きなんだ、と諦めたように言われた。


「そうですね。なんか、気になっちゃったんですよ。いっつもニコニコヘラヘラしてるタツヤの、見た目とか、生活とかが」


雪合戦に軍手でやってきたタツヤ。
靴下に穴が空いているタツヤ。
一日中、体操服を着ているタツヤ。
前歯が三つほど抜けているタツヤ。
自分で作った紙人形でずっと遊んでいるタツヤ。


「一回、タツヤが一週間くらい学校を休んでいた時期があって、お見舞いに行ったんですよ。タツヤの家に向かう途中の公園で彼を見つけたんですけど」

「ほぉ」

「ブランコに座っていたタツヤの顔がパンパンに腫れていて、どうしようかと思いました」


四年生の夏だった。
丈が短くなってきちきちの服を着たタツヤの、青黒く変色した顔。
いびつな形になった顔に、みのりは怖くなってその場を逃げた。







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