私の愛しいポリアンナ
「すみません、私、帰ります」
「顔、真っ青だぞ」
「はい。今すごく気持ち悪いです」
いけない。
やらかした。
大学の時、サークルの先輩に教えてもらった「酒を飲むときの心構え」を忘れていた。
飲んだ酒と同じ量だけ水を飲め!を。
なんども言われて、それを従順に守っていれば酒を楽しめると教えてもらったのに。
疲労、一気飲み、水分不足。
あらゆる理由が重なって、みのりは悪酔いしていた。
社会人なのに酒に呑まれるとは、不覚。
みのりはガンガンうるさい頭に怒りを覚える。
「おい、ちょっと、ここで戻すなよ。トイレ行くぞ」
秋が何か言っているようだが、みのりはよく聞こえない。
気持ち悪すぎて、言葉を発することもままならない。
何が何だか、みのりにはもうわからなかった。
ただ一つ確かなことは、秋に大変な迷惑をかけたということだ。
夜のお洒落なイタリアンレストランに、みのりのうめき声と秋のため息が響いた。