私の愛しいポリアンナ
「機嫌、悪そうですね。なんですか、仕事がうまくいってないとか?」
「や、仕事は順調。日本人って社会の同調圧力が強いからか、他人とは違うことをしたいって欲求が変なところで発散されるよな。服とか趣味とか」
「はぁ」
「楽しけりゃなんでもいいけどな。俺が不機嫌なのはあんたのせいだよ。俺と一緒の時にぶっ倒れやがって」
「体調管理はしっかりしますって、これから」
運ばれてきた水を一口飲む。
喧騒に火照った体に、ぬるめの水がしみる。
みのりはもっと冷えた水が飲みたかった。
冷たすぎる水は体に良くないことはわかっているが、キンキンに冷えた飲み物が飲みたい。
冷たい飲み物が体に入って、温められて、体温と同じ温度になって、汗などになって体から出て行く。
水の温度を上げるために、私の体はどれだけのエネルギーを使っているのだろう。
体って、頑張っているんだなぁ、とみのりは意識を飛ばす。
そんなみのりの状態に気づいたのか、秋がバンと小気味よく机を叩く。
「酒にクスリを入れたんじゃないかって疑われて、ほんっとに気分悪かった」
「あぁ、そんなこと言われたんですか?」
「言われなかったけどな。あんたのグラス調べられてりゃそうだろ」
「いや、普通のお酒か確認しただけじゃないですか?」