私の愛しいポリアンナ
「一回くらい行ってみてもいいと思いますよ」
「何か面白いものでもあるの?」
半笑いのみのりの言葉につられたのか、秋が身を乗り出してくる。
みのりは少し口をつぐむ。
鹿川について何か話そうとしても、話題がどれもこれも食事中には向いてないものばかりだ。
それでも見つめてくる秋に根負けし、まぁいいかとみのりも口を開く。
「この前、鹿川の炊き出しでもらった豚汁に、ゴムが入ってたんですよ」
「輪ゴムか?」
「いえ。男の人が財布に入れてるであろうアレです」
みのりの言葉に合点がいった途端、秋が咳き込んだ。
苦しそうに身を屈めた彼のつむじに、みのりは思わず笑ってしまう。
「もちろん、袋に入ってる使用前のですよ」
「当たり前だ!」
秋が噛み付くように言い切る。
箱入りであろうお坊ちゃんには少々刺激が強い話だったか。
そうこう話している間に、餃子が運ばれてきた。
いい色に焦げ目がついた餃子の羽は、パリパリでとても美味しそうだった。
こんなに上手に羽根つきが作れるなんてすごいなぁとみのりは素直に感心する。
むしゃくしゃした様子で小皿に醤油を入れる秋。
みのりにからかわれたのが気に入らない様子だ。
その証拠に、みのりの皿にラー油をドバッと入れてきた。
この野郎、と思いながらみのりも秋の皿にお酢をドバッと入れた。