私の愛しいポリアンナ
「みのりさぁ、あの子に一回怒ったほうがいいよ」
いつの間にか同期のマオちゃんが後ろに来ていて、何やら不機嫌そうにそう告げてきた。
みのりは首を伸ばしマオちゃんに視線を向ける。
「まぁ、いいよ。私は気にしないし」
「気にしなよ!あの子、完全にみのりのことバカにしてたよ」
フーフーと威嚇めいた口調で話すマオちゃんを何とかなだめる。
ミヨちゃんがちょっとキツいのは今に始まった事ではないし。
それに彼女は正直過ぎるだけだ。
悪いことではないだろう、多分。
マオちゃんの口にムースポッキーを押し込みながら、みのりは窓の外を見る。
高くそびえ立つビルの隙間から、青すぎるほどの空。
こんな日は、誰もいない公園のブランコに座りたいなぁ、と考えた。
ゆらゆらブランコを揺らしながら空を見上げて。
青いなぁ、まぶしいなぁ、なんて。
意味のない時間をだらだら贅沢に過ごしたい。
ぼんやりと、そう思った。
芹沢みのりは、基本的に物事にガツガツしないタイプなのだ。
結婚が、婚期が、彼氏が、と焦ってはいるが心の奥底では「別にどうとでもなれ」と思えてしまう人間なので、結局なんの行動もしないのである。
そんな彼女の尻を叩いたのは、心優しい同期のマオちゃんだった。