私の愛しいポリアンナ






みのりの頭に眩い光がチカチカと割り込んでくる。
先週末の光景が蘇る。
割れたガラス瓶。
地面に転がっている犬。
その周りを飛び回るハエ。

歓楽街の喧騒から外れた暗い路地。
その奥で、タツヤの後ろ姿を見かけた。
誰かを抱えている。

酔いつぶれた人を介抱しているのか。
「タツヤ、手伝おうか」と声をかけたかった。
でも、みのりは口に出せなかった。


タツヤが抱えていた人の、細い足と腕。
靴が脱げたのか、靴下だけだった。
ヨレヨレになったスカートが見えた。
そして、だらりと翻るカーディガン。

鹿川の外れにある、中学校の制服。

何、今度の恋人は、コスプレ趣味の人?
それとも、もしかして、援交ってやつ?

みのりには、真実を確かめる勇気がなかった。
怖かった。
援交だって言われたら、私は、私は、どうしよう。
タツヤが犯罪に手を染めたら、私は、どうすれば。

その時のみのりは、飽和状態の頭で、ただ立ち尽くしていた。






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