私の愛しいポリアンナ








『車出すから付き合え』という、こちらの都合を考えていない秋のメール。

めんどくさいし行きたくない、と返しても『いいから付き合え』の一点張り。
なんでこの人こんなにしつこいかなぁ。
みのりは仕事終わりのだるい体でiPhoneをいじる。

『どこ行くんですか?』

打ちたくはなかったその一言。
行き先を聞いてしまったら、了承したみたいじゃないか。

1分もかからずに返信はきた。

『鹿川、案内よろしく』


鹿川。
なんで秋が鹿川?

みのりの頭に大量のクエスチョンマークが発生する。
まさか、この前のみのりの話で鹿川に興味を持ったのか?
それにしたって、秋に鹿川という土地は合わないことこの上ない。

というか、あそこの住人からしたら彼はいい鴨だ。
そんな簡単にスられるほど間抜けではないかもしれないが。
パテックフィリップの時計をしてる男なんて、あっという間に客引きに囲まれるはずだ。
ひどければその場でボコボコの袋叩き。
身一つで路地裏に捨てられてしまう。






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