私の愛しいポリアンナ
『服装、ユニクロとかでかためてください。あのバカ高い腕時計もスられたくなかったら外して』
そう返信してから、みのりはハッと我に返った。
こんなことをメールしてしまったら、これこそみのりが付き合う流れだ。
慌ててもう一通メールを送る。
『私は行きませんからね』
送ると同時に着信音。
設楽秋だ。
うわぁ、と思わず顔を歪める。
みのりは席を立ち、廊下に出る。
廊下の端で深呼吸をひとつしてから、電話に出た。
『おぅ、俺。金曜の19時に迎えに行くから。裏手に回ればいいよな。白のビートルな』
「いや、私は行きませんって・・・」
みのりが話し始めた瞬間に通話は切られた。
この野郎。
iPhoneを握りしめながら、どうしようとみのりは考える。
秋の狙いが何なのかは知らないが、今のみのりは鹿川には行きたくない。
タツヤに会いたくないからだ。
中学生の女の子を運んでいたあの日のタツヤ。
あの時の真相を聞く勇気が、未だに持てないでいた。
はぁ、とみのりはため息をつく。
その様子を見られていたらしく、「大丈夫?」とマオちゃんが声をかけてくれた。