私の愛しいポリアンナ




「鹿川に行くなら、その場所に精通している人と一緒に行けって言われたからさ。あそこ、掃き溜めみたいな場所のくせにけっこう排他的なんだろ?」

「あぁ、はい、まぁ、そうですね」


誰だ。
設楽秋にアドバイスをしたのは誰だ。

確かに、鹿川はよそ者、特に崖の上に住む富裕層にはいい顔をしない者ばかりだ。
金持ちが一人で路地を歩けばたちまち身ぐるみ剥がされるほどの治安の悪さ。
逆に、鹿川に一人でも知り合いがいればあっさりと仲間に入れてくれる。

そのくらい、極端な場所。

そんな鹿川にみのりは何度も訪れ、なぜ今まで無事だったのか。
それは、みのりにはタツヤがいたからだ。

タツヤの存在のおかげで、鹿川でも大きな事件に巻き込まれることはなかった。
巻き込まれそうになっても「タツヤの友人」ということで助けてもらったこともある。


「それに、一度見ておきたかったんだよな。日本最後のスラム街ってやつ」


そう、機嫌良さそうに呟く設楽秋。
スラム街。

確かに鹿川はスラム街ではある。
けれど海外のスラム街と比べるとかなり安全だ。

アフリカなどではタクシーを降りた瞬間に撃たれるほど治安の悪い場所もあるらしいし。
ミヨちゃんも言っていた「麻薬戦争」で無法地帯の場所もある。

それに比べたら、知り合いさえいれば安全に過ごせる鹿川は穏やかなものだ。
内部で麻薬、賭け事などが頻繁に横行していても、関わろうとしなければいい。





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