私の愛しいポリアンナ





鬱々としたみのりを置いてけぼりに、秋が運転する車は容赦なく進む。
自動車専用道路に入り、いよいよ鹿川へ続く道だ。

「本気でいくんですね」とのみのりの言葉に、秋は眉を上げる。


「なんだ、あんたこの前から行きたくなさそうだったけど、タツヤと喧嘩でもしたのか?」

「別に」

「エリカ様かよ」


みのりのふてくされた声にもかまってくれる様子はない。

今日だけでも数え切れないほどのため息。
どんな顔してタツヤに会えばいいのだろう。

いや、別にみのりのことなどタツヤは気にしない。
みのりが何を言っても、タツヤはタツヤの生きたいように生きるのだ。
ホワホワ、ニコニコとした様子で。


白のビートルが走ること40分。
鹿川の繁華街手前の、法外な値段の駐車場に車を停める。
駐車場の看板を見て、秋はおもわずといったふうに吹き出した。


「1時間5000円ってスゲェな」

「ちょっと話つけてきます」


みのりはすぐに助手席から降りる。
そのまま、駐車場の入り口に向かって歩き出す。

駐車場の入り口に座っている老人。
みのりが手をあげれば、彼は何度か瞬きをした。






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