私の愛しいポリアンナ
「あぁ、タツヤの女か」
「友人です。代金、まけてください」
「いいよ、タダにしてやる。ただし、日付が変わる前に出てってくれ」
「今日、何かあるんですか?」
「サツが来るって噂だ。痛くもない腹、探られたくないだろう。用が済んだら出て行くんだな」
そう言って、ペッと唾を地面に吐き出す。
「はぁ」とみのりは返事をするしかない。
そんなみのりを見て、車から出てきた秋を見て、そうして老人は口角を上げた。
「何だ、タツヤに結婚報告か」
「はぁ」
「幸せにな。ここにはもう来ない方がいい」
ゆるく手を挙げた老人に、みのりは一礼してから背を向けた。
ニヤついてる秋までズンズ歩くと、彼の手をおもむろに取る。
そのまま繁華街の入り口に向かって歩みを進めた。
一分ほど歩き、駐車場から少し距離が出たところで秋がようやく口を開く。
「俺たちいつ付き合ったんだ?」
「さっきです。物見遊山の人間だって知られたら、いい顔されないですよ。帰る頃にはあなたのビートルが廃車になってるかも」
「血の気の多い奴らだなぁ」
どこか愉快そうに秋は言う。