私の愛しいポリアンナ
繋いだ手に意識をやり、みのりはハッとする。
なんでこんな簡単なことを失念していたのだろう。
あんたバカだな、といった風に秋の横顔は嫌味に笑っている。
秋の身の安全のために恋人設定したのだから、確かに風俗に入るのはおかしい。
こんなことも判断できないとは。
わかってはいたが、私は動揺しているのだ。
みのりは唇を噛む。
今日、鹿川に来る前になんの連絡もしていないのだから、タツヤに会える可能性は低い。
むしろ会いたくない。
それでも、タツヤは鹿川に住んでいるのだから、会わない可能性はゼロではない。
もしも、ばったり会ってしまったらどうしよう。
ここ数日抱えていた不安。
そんな不安が動揺を招いたのだろう。
ギラギラとした門をくぐる。
目に痛いほどのネオン。
夜なのに眩しすぎるほどのその明かりに、「趣味悪いな」と秋が顔をしかめる。
いつも思うがどこから電気を持ってきているのだろう。
アルミ缶がそこらにばらまかれ、獣のような匂いが充満している。
綺麗とは言えない、ムッとする空気。
この雰囲気を感じるたび、あぁ、鹿川に来たなぁと実感する。
鹿川の繁華街に、秋とみのりはいよいよ足を踏み入れていた。