私の愛しいポリアンナ
「俺は見れたらいいんだ。雰囲気を感じるだけで」
声をかけてくる露天商を無視しながら、秋が楽しげに言った。
「まぁ、欲をいえばタツヤにも会ってみたかったが」
付け足された秋の言葉に、みのりは黙っていた。
私は会いたくない。
正直にそう言えば、理由を問われるのは目に見えてる。
あんた、タツヤのこと好きなのに会いたくないの?
あぁそうか、男連れてるとこ見られたくないのか。
まぁ、普通はそうだよな。
言われるであろうことを想像する。
うん、そう。あなたと一緒にいるところを見られたくないの。
思ってもいないことでも、笑顔で言える自信はあった。
あったが、なぜか今はうまく笑える気がしなかった。
みのりは空席の方の手をぎゅっと握りしめる。
体にまとわりつく熱気から逃げたくて、パッと顔を上げる。
「なにか、食べません?」
急に明るく話し出したみのり。
秋は驚いたのか、もともと大きな目をさらに大きくする。
しかしすぐにその顔に笑みが浮かぶ。