私の愛しいポリアンナ
「タツヤ、この人、設楽秋さん」
挨拶もなしにいきなり紹介を始めたみのりに、秋はギョッとした。
もちろん、そんな内心は顔に全く出さなかったが。
秋の心は完全に接待用の心持ちになっていたので、少しのことでは表情は崩れなかった。
みのりの紹介に、タツヤは眠そうな目をゆっくりと秋に向ける。
くるくると絡まった金髪。
眠たげな目。
「したらさん?俺、どっかで会ったこと会ったっけ?あ、もしかして小学校の同級生とか?」
「違うよ、タツヤと設楽さんは初対面」
「そっかぁ」
舌ったらずな声で「よろしく」とタツヤは言う。
秋は彼の握手に応えながら、彼がポリアンナか、と思っていた。
ポジティブというよりは、ぼーっとしている印象だ。
彼の髪はもともと癖っ毛なのかくるくるで、それにさらに寝癖とも思えるうねりが頭のてっぺんにできている。
眠たげな目に舌ったらずな話し方。
前歯がいくつか欠けてる上に、残った歯も溶けているのが見られる。
ヤク中かよ、勘弁してくれ。
秋は初めて鹿川に来たことを後悔した。