私の愛しいポリアンナ
「んで、二人は今日何しに来たの?」
今日は特に珍しいもの入ってなかったと思うけどなぁ、とポリポリ頭をかきながらタツヤは言う。
いや、特に用事ってわけは、と言いかけたみのりを秋が遮る。
「珍しいものって、何だ?」
「ん?」
「さっき言ってただろ、今日は珍しいものが入ってないって」
単純な興味だった。
秋にとって、道に散乱する酒も糞尿も犬猫の死体も珍しいものだった。
それでも、鹿川の住民はそんな道端に目もくれないし、隣を歩くみのりも当たり前のようにそれを無視していた。
無視というよりは、それが当たり前というように歩いていた。
そんな、秋にとっては非日常すぎる鹿川の住人が言う、「珍しい」ものに興味を惹かれた。
秋の質問にみのりは顔を引きつらせ、タツヤはキョトンとしている。
「子ども」
ポヤポヤとした口調でタツヤはそう言った。
タツヤのその言い方こそが子どもみたいだったが、秋は構わず視線で続きを促す。
「変な形をした子の肉って、ここでは珍重品なんだ。みのりちゃんはいっつも怒ってバイヤーにつまみ出されてるけど」
今日は警察が来るからオークションはやってないんだ、とタツヤは続ける。
珍重品、という言葉をタツヤが口にするとチンチョーヒン、という外国語に聞こえる。
絶句する秋の隣で、みのりは下を向く。
そんな二人の様子を見て、タツヤは面倒くさそうに眉を寄せる。