私の愛しいポリアンナ
あなたの泥の河
帰りの車の中は、ただひたすら重たい沈黙が流れていた。
どんよりというよりは、何だかやけにパサパサに乾いてしまったような空気。
みのりは何で自分がこんなにも落ち込んでいるのか、わからないまま所在なく指を弄ぶ。
犯罪の現場を見ながらも何の行動も起こさなかったことを知られて落ち込んでいるのか。
タツヤの法意識の低さを知られて落ち込んでいるのか。
秋は黙ったままビートルを走らせる。
何でもいいから、何か言ってくれないかなぁ、とみのりは思う。
なんですぐに警察に言わなかったんだと怒鳴られれば楽になる気がする。
いい加減、みのりは鹿川やタツヤから離れたかったのかもしれない。
送ってもらうつもりでいたが、秋が運転するビートルは意外な方向に進んだ。
住宅地でも街でもない、田舎の方へと続く道路に入る。
「どこ行くんですか?」
「あんた、明日の予定は?」
「休みです。ゴロゴロする予定でした」
「ちょっと付き合え」
それだけ言う秋。
この言い方だとみのりが嫌がっても車を止めるつもりはないようだ。
みのりは諦めて目を閉じる。
車の振動が心地良い。