私の愛しいポリアンナ




秋はビートルに軽く体を持たれかけて、じっと海を見ていた。
大きな瞳は少し伏せられている。
夜通し運転し続けたわけだから、彼も眠いのだろう。



「タツヤは、」


かすれた声でそう言って、秋は黙り込んだ。
みのりは何も返さずに海を見つめた。

夜明け前のぼんやりとした明るさの中で、海は何だか寒々しかった。


「タツヤとあんたは、あまり良い関係じゃないのな」


秋は断定するように言い切った。


「まぁ、仲良くはないです」

「あんたはタツヤが好きで、でもタツヤはあんたを疎ましいと感じてるわけか」


ハッとかすれた笑い声を出す秋。
そのバカにしたような言い方にみのりはムッとする。


「昔は仲よかったんですよ。でも、色々あって、ちょっと微妙な空気のままここまで来ちゃったんです」

「あんなのと仲良くしなくて正解だろ。呂律が回ってない、目の焦点が合わない、歯が溶けてる、完全にジャンキーだろ」

「鹿川にはヤク中しかいませんから」

「なんでそこで威張るんだよ」


おかしそうに笑う秋をみのりは睨みつける。
その視線を軽く受け流し、秋は顔を上げ、海を見つめる。






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