私の愛しいポリアンナ
「ひっでぇ場所だった。想像以上」
「いい社会経験だったんじゃないですか」
「あんたの趣味の悪さも実感した」
みのりは下を向く。
お気に入りのグレーのパンプスが滲んで見えた。
趣味の悪さ。
タツヤはいい奴ではない。
頭は悪いし、下半身はゆるいし。
なんでこうなっちゃったのかなぁ、とみのりはここ最近の弱気な自分にも嫌気がさしていた。
「いいじゃないですか」
「別に悪いとは言ってないだろ。誰を好きになろうが本人の勝手だ」
「タツヤが、」
言いかけた言葉が震えていたことに自分でも驚いた。
その声は完全に泣き声で、なんで私は泣いているんだと頭の冷静な部分で思う。
「タツヤがわからないんです。いっつも笑ってたくせに。突然、とつぜ・・・」
なんて繋げればいいのかわからず黙り込む。
グレーのパンプスにポツポツと染みができる。
うわぁ。
泣いてるよ私。
20越えた女が、何でこんなわけわからないことで泣いてんだ。
自虐気味に考えながらも、みのりの目からは何故かあふれてくる塩水。