私の愛しいポリアンナ





「突然、タツヤがワルになったってか?」


再び、茶化すように秋に言われて「違う」とみのりは食い気味に答えた。


「いっつも、私が注意しても怒っても、笑って能天気に無責任でいたくせに。全く笑わなかった時があって」


鼻水まで出てきた。
最悪だ。

品もなく服の袖で拭おうとしたら、目の前に黄色いハンカチが差し出される。
秋がものすごく嫌そうな顔をしながら差し出してくれたハンカチ。
「頼むから、袖で拭うのだけはやめてくれ」と言われた。
彼の育ちの良さでは、袖で鼻を拭うのは我慢できない行為らしい。

みのりは奪い取るように彼からハンカチを受け取ると、ズビーッと容赦なく鼻をかんだ。
途端に嫌そうに歪む秋の顔。
それがおかしくて、みのりの喉から笑い声が漏れた。


「タツヤが高校生の時、彼女を妊娠させたって話しましたよね?」

「あぁ、なんか言ってたな」


笑った後、ポロリとみのりは話し始めていた。
秋は目線を海に向けたまま相槌を打つ。






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