私の愛しいポリアンナ
「いつからタツヤのこと好きだったんだ?」
秋はさらりと話を変えた。
このまま放っておけば、みのりが思いつめて「入水します」とでも言いそうな雰囲気だったからだ。
まぁ、入水は冗談だったが、「海にちょっと入りたい。足を浸すだけだから」ぐらいは言いそうだ。
別に海に入るのは勝手だが、帰りのことを考えると、海水まみれの足で自分のビートルに乗って欲しくなかった。
みのりはぼんやりと海を見ている。
秋の質問も聞いているのかはわからない。
それでも、10秒ほどで話し始めたので考えてはいたのだろう。
「小学生の終わりか、中学生の頃からです」
「曖昧だな」
「だって、本当になんとなくだったんです。思春期の、異性を意識する頃ってあるじゃないですか。ちょうどその頃に、なんとなく近くにいたタツヤを好きだなぁって思ったんです」
よくある話でしょう、と抑揚なくみのりは言う。
あまり思い出したくない記憶だった。
けれども、タツヤの彼女の妊娠中絶事件を話してしまった後だからか、もう秋には全部話してしまってもいいかと吹っ切れていた。
「私がタツヤを異性として意識し始めたら、タツヤが言ったんです。みのりちゃん、そういうのやめてって」
「きれいに振られたんだな」
「玉砕でした」
みのりは苦笑いをこぼす。
当時はかなり傷ついたのだ。
恋という甘酸っぱいイメージのものをついに自分が体験するのかと思った矢先のタツヤの拒絶。