私の愛しいポリアンナ






秋と鹿川に行ってから、みのりの体調は芳しくなかった。
徹夜の後に潮風に当たったのがよくなかったのか。
それとも、タツヤの話をし尽くして、自分の中の糸が切れたのか。

アパレル商品店内一掃セールのコンセプト会議中も、集中しなくちゃと思う一方で、体はものすごくだるかった。
ミヨちゃんの声もガラス越しで聞いているような感覚だ。


「30代後半から40代の客層をターゲットにするって言ったって、近くに大丸があるんですからそっちに流れるだけですよ!」

「そうは言っても、若い子は百貨店にはあまり来ないです」

「うちは家族連れをターゲットにした店が多いからいつも通り、ファミリー向けので行くべきじゃない?」

「毎回それで赤字なんですから!売る対象を変えるか、セールの内容を変えるかするべきでしょう!」


もともと今の国内自体が不況だからか、店全体の売り上げも低迷している。
あらゆる部署のメンバーを集めて次のセールの会議をしているが、あまり良い意見は出そうにない。

ぼんやりと落ちそうな瞼のまま、みのりは目の前に置かれたお茶を見る。

国全体でみんなお金がないので、贅沢品にお金は払わないだろう。
服や嗜好品への節約志向は進む。
あと、エステ店への客足も少なくなるはずだ。

不況の中でも人が変わらずにお金を使うものといえば、食料品、生活必需品。
あとは、子どもへの教育費くらいだろうか。

みのりが心ここに在らずなのに気づいたのか、マオちゃんがギロリとこちらに睨みを利かせる。
軽く肩を上げる。
目の前のお茶を飲み、眠気を飛ばす。






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