私の愛しいポリアンナ
崖の下にて








『鹿川地区では連日小規模な抗争が起きており、連日、警察との衝突が・・・』


車のラジオをミュージック再生リストに切り替えた。
秋はふぁ、と一つあくびをすると目をこすった。

みのりとの食事の二日後、秋は再び鹿川に向けて白のビートルを走らせていた。

ここ数日、鹿川には警察がたくさん投入されている。
カジノ計画を知った鹿川の住人の抗議を沈静化するためだ。

鹿川をカジノにするにあたって、住人からの非難は予想できていた。
武力で反抗することもだ。
もともとそれに備えて警察に市長から鎮圧部隊の要請を出していたらしい。

だが、予想以上に鹿川の反抗は弱く、小規模な抗争しか起きていない。
せっかく用意した鎮圧部隊も拍子抜けしたそうだ。


『鹿川は薬物中毒者しかいないと聞いていましたが、本当だったようですね』

『あれは抗争とも言えない、酔っ払いの馬鹿騒ぎ以下ですよ』


昼間、会話したアプリ会社の代表の言葉を秋は思い出す。
彼もカジノ計画の出資者の一人だった。


『やはり薬物は人を弱くするんですね。アヘン戦争しかり』


ニコリとも笑わずに男はそう話を切り上げ、今度共同開発するアプリの話に移った。
秋も「そうでしょうね」と返した記憶がある。





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