私の愛しいポリアンナ





秋がどう切り出そうか迷っている間に、タツヤの方から話し始めた。


「変な子だよ。いっつも俺がお酒に薬入れてるの見てるのに飲むんだ。頭悪いのかな」

「・・・それで?」

「もったいないから、ちゃんと手ェ出すけどさ」


意識ない相手にやっても、全然面白くないんだ。

タツヤが当たり前のようにそう言った瞬間、秋は拳を握りしめていた。
鹿川は無法地帯。
そんなことは百も承知だ。
だからと言って、目の前で起こるであろう犯罪を秋は見逃せなかった。
基本的に秋は育ちがいい、一般的な常識を持ち合わせた好青年だったのだ。

秋の様子を変化を感じたのか、タツヤは顔を上げる。


「なに、怒るの?」


怒られるの久しぶりだなぁ、とのんびりとした口調。
彼のこの甘えを感じさせる声音は、生まれた時からの標準装備なのだろう。

これに、女性は庇護欲をそそられるのか。
「タツヤを知りたい」とこぼした女性を思い出す。
馬鹿な女だなぁ、と思う。
恋愛が絡めば男も女も馬鹿になるが、それにしたって彼女は趣味が悪すぎる。






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