私の愛しいポリアンナ





「お前、二度とタツヤに会うな」


顔を合わせた瞬間、そう告げられた私の心情を答えなさい。
びっくりしすぎて思わず入試問題のようなことを考えてしまった。

目の前でいかにも憤慨した様子の秋に、みのりはあっけにとられていた。

普段は甘めの顔なのに、今日は凍えそうなオーラを放っている。
大きな目がきりりとつり上がっている。
その目力で人さえも殺せそうだ。

いや、秋の怒り心頭な様子も気になるが、今問い詰めるべきはそこじゃない。
なんで知り合いでしかない秋にタツヤと会うことを禁止されなくてはいけないのだ。
あんたは私の父親か。


「べ、別に私の勝手でしょう!」

「勝手じゃない!いいか、鹿川は潰れる!タツヤは施設にぶち込まれる!あんたは、タツヤには二度と会わないんだ!」


きっぱりと宣言されたが、全く納得できない。
というか、憮然とした表情の秋が偉そうで腹立たしいことこのうえない。


「なんであなたにそんなこと言われなくちゃいけないんですか!私はタツヤの元に行きますよ!今の仕事を辞めてでも!」

「いい加減にしろ!あんたがいつまでたってもそんなんだから、タツヤが調子にのるんだ!」


売り言葉に買い言葉。
会ってはいけないと言われると会いたくなる。

みのりも秋も、夕方の人の往来がある並木道だということを忘れてつい怒鳴りあってしまった。
お互いに睨み合う。
どちらも目を逸らさない。

お互いに引かない様子に、秋とみのりの近くを通り過ぎる人々は不躾な視線を向ける。
埒があかない。
みのりは胸を張り、思い切って聞いてみる。




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